第八番 熊谷寺
熊谷寺について
四国八十八箇所第八番札所である熊谷寺は、弘仁8年(817年)、弘法大師空海の神秘的な体験により創建された寺院です。
伝承によれば、大師が閼伽ヶ谷(あかがたに)で修行中、紀州の熊野権現が出現し、「長く衆生済度の礎とせよ」との言葉とともに、一寸八分(約5.5センチ)の金の観音像を授けたといいます。
大師はこれを受けて等身大の千手観世音菩薩像を彫造し、その胎内に授かった金の観音像を納めて本尊としました。
元禄2年(1689年)の『四國遍禮霊場記』には、「境内は清幽で、谷が深く、水は涼しく、南海が一望できる。千手観音像の髪の中には126粒の仏舎利が納められてある」と記されており、当時の境内の様子を今に伝えています。
寺は山中にあったため戦国時代の兵火による被害は比較的少なかったものの、元禄年間(1688-1704)までに幾度かの火災に遭っています。
特に昭和2年(1927年)の火災では本堂とともに弘法大師作の御本尊も焼失するという大きな被害を受けました。
その後、歴代住職の尽力により昭和15年(1940年)に本堂は再建されましたが、第二次大戦により工事は中断。
ようやく昭和46年(1971年)に全容が完成し、新造された本尊の開眼法要が執り行われました。
熊谷寺の特筆すべき建造物として、四国霊場最大級の仁王門があります。
貞享4年(1687年)の建立で、和様と唐様を折衷した様式を持ち、間口9メートル、高さ12.3メートルの堂々たる威容を誇ります。
2層目の天井や柱には極彩色の天女像などが描かれており、徳島県の指定文化財となっています。
また、大師堂に安置されている弘法大師坐像は室町時代の作で、同じく県の指定文化財です。
境内には熊野権現が祀られた鎮守堂も建てられており、大師の修行の地としての歴史を今に伝えています。
このように熊谷寺は、弘法大師の深い縁と歴史的建造物が織りなす、四国遍路の重要な札所として、今日も多くの参拝者を迎えています。
- 創建
- 弘仁6年(815)
- 開基
- 弘法大師
- 宗派
- 高野山真言宗
- 御本尊
- 千手観世音菩薩
- 御真言
- おんばざらたらまきりく
- 御詠歌
- 薪とり水くま谷の寺にきて
難行するも後の世のため
- 住所
- 〒771-1506 徳島県阿波市土成町土成字前田185
- 電話
- 088-695-2065
- 駐車場
- 志納金制(普通車20台、マイクロバス・大型バス6台、臨時駐車場3ヶ所50台)
- アクセス
- 霊場会サイト
- https://88shikokuhenro.jp/08kumataniji/
- Wikipedia
- https://w.wiki/CCUC