第十番 切幡寺
第10番札所 得度山 灌頂院 切幡寺(とくどざん かんじょういん きりはたじ)
切幡寺について
四国八十八箇所第十番札所である切幡寺は、切幡山の中腹、標高155メートルに位置する古刹です。
その創建には感動的な物語が伝えられています。
弘仁6年(815年)、四国巡錫中の弘法大師が山麓に立ち寄った際、傷んだ僧衣を繕うための布を求めました。
すると、一軒の家で機を織っていた娘が、躊躇することなく織りかけの布を切って差し出したといいます。
この純粋な善意に感動した大師が娘の願いを尋ねると、彼女は自身の生い立ちを語り始めました。
父は都で薬子の変に連座して島流しとなり、身重だった母は、もし男子が生まれれば同じ運命が待つことを懸念し、清水の観音様に女子の誕生を祈願したといいます。
その願いは叶い、この娘として生を受けたのでした。娘は「亡き父母に代わって観音様をお祀りし、自らも仏門に入りたい」と願いを告げました。
大師はこの望みに深く心を動かされ、一夜のうちに千手観音像を彫造。娘を得度させ、秘密灌頂を授けました。
すると奇跡的なことに、娘の身体から七色の光明が放たれ、たちまち千手観音菩薩の姿に変じたといいます。
この出来事を知った嵯峨天皇の勅願により寺が建立され、大師自らが彫った千手観音像を南向きに、即身成仏した千手観音像を北向きに安置して本尊としました。
寺の名称「切幡」や、「得度山」「灌頂院」という山号と別称も、この縁起に由来しています。
現在の境内からは、眼下に吉野川の流れを望み、前方には四国山脈の雄大な山並みが広がります。
特に国指定重要文化財である大塔からの眺望は見事です。
山麓には巡礼用具店が立ち並ぶ門前町が形成され、「女人即身成仏の寺」として、特に女性の参拝者から深い信仰を集めています。
- 創建
- 弘仁年間(810〜824)
- 開基
- 弘法大師
- 宗派
- 高野山真言宗
- 御本尊
- 千手観世音菩薩
- 御真言
- おんばざらたらまきりく
- 御詠歌
- 欲心をただ一筋に切幡寺
後の世までの障りとぞなる
- 住所
- 〒771-1623 徳島県阿波市市場町切幡字観音129
- 電話
- 0883-36-3010
- 駐車場
- 無料(下の境内に普通車20台 ※中・大型バスは進入不可)
- アクセス
- 霊場会サイト
- https://88shikokuhenro.jp/10kirihataji/
- Wikipedia
- https://w.wiki/CCUF